原子力って何?

原子力って何?

今回は、「原子力って何」というテーマで考えたいと思います。「原子力」については「普通の反応」と「原子力の反応」との違いを理解した上で「原子力を利用した発電の仕組み」や「核燃料サイクル」の全体イメージを描くことが大切ではないかと思います。なかなかイメージし難いのですが、私なりのイメージを以下に紹介させていただきます。

普通の反応

私たちの身近なエネルギー源の大部分は「化学反応」に基づくものです。例えば、「木を燃やして暖をとる」、「石油ストーブ(最近はファンヒーター)で部屋を暖める」、「ガスでお湯を沸かす」等は目に見える「火」を利用しています。「ガソリンやディーゼル油で自動車を走らせる」や「石油、石炭、天然ガスを燃やして電気を起こす」は「反応」を実際に目で見ている訳ではありませんが、何かを燃やした「火」を利用して、「動力」に変えたり、「電気」を起こしたりしているというイメージはそれとなく浮かびます。これらの化学反応は、種々の化合物「分子」間の反応を利用しています。

水素(H)や酸素(O)の様に、物質を構成する最小の粒子で、これ以上分けることのできないものを「原子」と呼んでいます。また、水素と酸素が結びついてできる水のように、原子がいくつか結びついてできた粒子で、その物質の性質を持つ最小単位となるものを「分子」と呼ばれています。家庭で利用するガスの代表は、天然ガスと呼ばれるものですが、主な成分はメタンと呼ばれる炭素と水素が結びついてできた「分子」です。

この「分子」が空気中の酸素分子と結びつく反応で、一般的には二酸化炭素と水の分子が生成され、この際に「熱」が生じます。私たちは、この「熱」を利用してお湯を沸かしたり、魚を焼いたりしています。つまり、「分子」の間の結びつきが変化する際に生じるエネルギーですから、いわば「分子力」と呼べるのかもしれません。もちろんこのような呼び名は、通常は使われていませんので、ここだけのお話ということにして下さい。

原子力の反応

「原子力」では、「分子」ではなく「原子」構成が変化する際のエネルギーを利用しています。このような「原子」構成の変化を利用しやすい物質として「ウラン」や「プルトニウム」が利用されています。このうち「ウラン」は自然界に存在する物質ですが、「プルトニウム」は自然界には存在せず、原子炉の中で「ウラン」が変化して生じています。

「ウラン」や「プルトニウム」は、「原子」としては非常に重く、安定な物質ではありません。これらのちょっと重くて安定ではない物質のことを「放射性物質」と呼んでいます。すなわち、「ウラン」や「プルトニウム」は、時間がたつと壊れて別の物質になってしまいます。そして、これらの「原子」が壊れるときに発生するのが「放射線」です。

ところで、「原子力」におけるエネルギーの源となる反応を「核分裂」と呼んでいます。「核分裂」の「核」は原子の真ん中にある「原子核」と呼ばれる部分が、「分裂(2つ以上に分れる)」するという現象です。「原子」に限らず何でもそうですが、大きくなり過ぎると不安定になります。人の「集団」も大きくなり過ぎると、何かのきっかけで小さな「集団」に分かれるのと似ています。

原子力を利用した発電の仕組み

原子力発電所では原子炉と呼ばれる「釜」の中に、最初に「ウラン」だけを入れて外から刺激を加えると、「核分裂」を起こします。この際に大量のエネルギー(熱)が発生するとともに、「ウラン」の一部が「ウラン」よりももっと重い「プルトニウム」という物質に変化します。「ウラン」は不安定な原子ですが、これよりも重い「プルトニウム」は、もっと不安定な原子です。このため、原子炉の中で生まれた「プルトニウム」は「ウラン」以上に「核分裂」がしやすい物質となります。ちなみに、外から加える刺激のもとは「中性子」と呼ばれる粒子です。

最終的に、「釜」の中で発生する熱の約3割は「プルトニウム」の「核分裂」により生じ、残りの約7割が「ウラン」から生じています。そして、「ウラン」や「プルトニウム」が「核分裂」により「生成」した「物質」を「核分裂生成物」と呼んでいます。すなわち、原子力とは燃料となる物質を「釜」の中に入れ、「核分裂」反応を起こします。この際に生じた熱を「水」などで回収し、水蒸気を発生させて、「タービン」と呼ばれる羽根のついた風車のようなものを回して、この回転のエネルギーを発電機で「電気エネルギー」に変えています。

自然の成り行きとして、時間が経つと「原子炉」と呼ばれる「釜」の中に入れた「ウラン」燃料の核分裂をする能力が徐々に低下してきます。そこで、1年に1回くらいの頻度で「釜」の運転を止めて、旧い「燃料」を新しい「燃料」に交換する必要が出てきます。通常は、「定期点検」と呼ぶ作業の一環として燃料交換も行っています。

そして、「釜」から取り出した旧い「燃料」を「使用済み燃料」と呼んでいます。「釜」の中には最初「ウラン」だけを入れましたが、「使用済み燃料」の中にはまだ、反応していない「ウラン」の他、「ウラン」から生じた「プルトニウム」と、「ウラン」と「プルトニウム」から生じた「核分裂生成物」が含まれることになります。結局、「使用済み燃料」は「ウラン」、「プルトニウム」と「核分裂生成物」という3種類の物質で構成されていることになります。

核燃料サイクルって何?

現在の出力100万キロワット程度の原子炉は1年間に約30トンの「ウラン」を燃料として発電のために「消費」しています。「消費」すると言っても「核分裂」を生じているだけで、実際に使った後の「使用済み燃料」の重さも約30トンです。この30トンの内訳は「核分裂生成物」が約1トン、「プルトニウム」が約300キログラムで、残りの約28.7トンが「ウラン」となっています。

先にご紹介した「使用済み燃料」から「核分裂生成物」を取り除き、「ウラン」や「プルトニウム」を回収しようというのが「再処理」です。すなわち、一度「処理」して「ウラン」燃料としたものを、原子炉の中に入れて使用し、その結果、生じた「使用済み燃料」から「ウラン」や「プルトニウム」を回収、リサイクルすることを目的に「再度」燃料を「処理」することを「再処理」と呼んでいます。

最初、自然界から得た「ウラン」を原子炉に入れて発電に利用し、その後、原子炉から取り出した「使用済み燃料」から「ウラン」や「プルトニウム」を回収し、これらを再び原子炉に戻すことにより燃料のリサイクルができるようになります。この燃料のリサイクルの流れのことを「核燃料サイクル」と呼んでいます。

「原子力」と言うと「原発(原子力発電)」をイメージされる方も多いと思います。しかし、「原子力発電」の「発電」原理そのものは「火力発電」と共通な点も多いと考えています。一方、大きな違いは、熱源として「原子力」では「核分裂」、「火力(勝手に「分子力」と命名しました)」では「燃焼反応」を用いている点にあると考えています。

すなわち「原子力」の最大の特徴は、燃料である「ウラン」、釜中で生成される「プルトニウム」、そして「ウラン」や「プルトニウム」の核分裂で発生する「核分裂生成物」の3つにあると感じています。そして、これらの物質の特徴を正確に理解することが、「原子力」の潜在的な可能性と問題点を理解するために重要と感じています。これらについては次回以降に考えてみたいと思います。

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